こんにちは。スプラッシュトップ編集部です。
日常的により良い映像を楽しみたいと感じる人にとって、「HDRテレビ」は魅力的なツールと言えます。しかし、HDRテレビは一般的なテレビよりも値段が高い傾向にあるため、そのメリットを具体的に把握できないと導入をためらってしまうこともあるでしょう。
本記事では、テレビにおけるHDRの概要やHDR写真との違い、HDRテレビのメリット、HDRに対応しているテレビの選び方を解説します。また、映像などのコンテンツをモニターで視聴する方に向けたモニターの選び方も紹介します。
HDRとは?
HDRとは、High Dynamic Range(ハイ・ダイナミック・レンジ)の略称です。つまり、輝度(明るさを表す指標)の最大値と最小値の比率を数値化した「ダイナミックレンジ」を広げて映像等を表現する技術です。この幅を広げるほど肉眼で見ているようなリアルな画像や映像になります。
以前より一般的に使用されているSDR(Standard Dynamic Range/スタンダード・ダイナミック・レンジ)よりも鮮やかな映像表現が可能です。
HDRに対応したテレビでは、SDRのものに比べ広い輝度や多くの色彩を映し出すことが可能です。映像の細かいディテールや色味が表現でき、その場にいるような臨場感を体験できます。
写真と映像のHDRの違い
HDRはテレビなどの映像だけでなく、写真の撮影技術としても使用されています。しかし、写真撮影におけるHDR機能はテレビの場合と違い、実際にダイナミックレンジを広げているわけではありません。
HDR機能を搭載したカメラは、複数枚の写真を高速で連続撮影し、それらを1枚に合成することで、明暗差を綺麗に表現したHDR風の写真撮影を可能にしています。
つまり、HDR写真は疑似的なものであるのに対し、テレビなどのHDR映像は実際にダイナミックレンジを拡張して出力されたものである、というのがそれぞれの違いです。
テレビのHDRには2つの方式がある
テレビで使用されているHDRには、大きく分けて2種類の方式があります。以下では、それぞれの出力方式の特徴を解説します。
PQ方式
PQ方式(Perceptual Quantizer方式)とは、より人間の目で見た状態に近い映像を作成できる方式のことです。「暗部」の輝度差に敏感で、「明部」の輝度差に鈍いという特徴を持ちます。
再現性の高さが求められる映画やドラマなどの制作で用いられることが多い方式です。
HLG方式
HLG方式(Hybrid Log-Gamma方式)とは、NHKとイギリスのBBCが生み出したよりデータ量が軽い方式のことです。従来のテレビ機材でも使用できる形式となっていて、テレビやライブ放送に適しているのが特徴です。
4Kチューナーが内蔵されているテレビはHLGに対応しているため、HDR画質の映像を4K放送の視聴時に活用できます。
PQ方式で代表的なHDR規格
PQ方式のなかにもいくつかのHDR規格が存在するため、ここでは代表的なものを説明します。
HDR10
「HDR10」とは、UHD Blu-rayで採用されている規格です。デジカメなどで撮影されるHDRと混同されないように、「10」という数値が付け加えられています。SDRの最高輝度である100nits(明るさを示す単位)に対して、HDR10は1,000~10,000nitsという最大100倍もの輝度で映像を再現できるのが特徴です。
また、明暗差も10bit(1024階調)で表現されるため、きめ細やかな映像表現を実現します。これは従来のSDRの8bit(256階調)と比較して、実に4倍の数値になっています。
Dolby Vision
「Dolby Vision」とは、HDR10と同様に最大10,000nitsの輝度に対応しつつ、明暗差が12bit(4096階調)で表現できる点が特徴のHDR規格です。
明暗差がHDR10の4倍となっているため、さらに細かな映像表現が可能です。動画配信サービス「Netflix」などではDolby Visionでの配信が増えてきています。よく動画配信サービスを利用する方にはDolby Vision対応のテレビは非常に魅力的でしょう。
HDR10+
「HDR10+」とは、先に紹介したHDR10をさらに拡張した規格です。ベースはHDR10を採用していますが、「ダイナミックメタデータ」に対応可能なため、より人間の目で見やすい映像に調整されるのが特徴となっています。
ダイナミックメタデータとは、明るさと暗さの表現を動的に変化させる映像データを意味します。HDR10+に対応している映像を再生するとダイナミックメタデータが読み込まれ、そのシーンの輝度表示性能にとって最適なトーンマッピング(明暗表現)を行ってくれます。
また、後方互換性によりHDR10の映像コンテンツをHDR10+対応のテレビで視聴可能です。逆にHDR10+の映像コンテンツをHDR10対応のテレビで視聴することもできます。
HDR対応テレビのメリット
一般的なテレビではなく、HDRテレビを選ぶことには、さまざまなメリットがあります。
明るい風景の視認性が高い
HDR対応のテレビでは、雲や太陽といった輝度の高い映像を視聴する際に、テレビの枠を超えてその場にいるような臨場感を得られるというメリットがあります。1画素単位で独立して発光できる有機ELテレビなら、暗部を再現するコントラスト性も高いため、映像が持つ本来の明るさを表現可能です。
明るい風景のシーンをHDR対応テレビで視聴すると、その美しさに息をのむことになるでしょう。
暗い風景が肉眼のように見える
HDR対応テレビは明るいシーンだけに限らず、夜景など暗さを強調した映像も鮮やかに表現可能です。全体が暗い映像でもそのなかにある光をしっかりと確保できるため、肉眼で見たときに近い感覚で夜の風景を視聴できます。
明るいシーンばかりが綺麗に映るのではなく、同時に暗い風景のシーンも鮮やかに表現できる点が、HDR対応テレビの魅力です。
HDR対応テレビで注意するポイント
HDR対応テレビを導入する際には、いくつか注意すべきポイントがあります。以下では、HDR対応テレビを利用する際の注意点を解説します。
HDRの映像コンテンツが必要
HDR対応のテレビを購入してもHDRの映像コンテンツがなければ、当然のことながらHDR映像を楽しむことはできません。例えばBlu-ray Discの場合は、 HDRに対応した「Ultra HD Blu-ray(ウルトラ エイチディー ブルーレイ)」という規格のソフトが必要です。
Amazonプライムビデオ、Netflix、U-NEXT、YouTubeなどの動画配信サービスでもHDRコンテンツの配信が始まっていますが、見たい作品がHDRに対応しているとは限らないため、事前に確認しておくとよいでしょう。
対応したHDMIケーブルが必要
HDRコンテンツを視聴するには、対応したHDMIケーブルが必須です。見た目は同じHDMIケーブルでも、古いバージョンは性能が変わってきます。HDR非対応のHDMIケーブルでテレビとプレーヤーをつないでも、HDR表示はされません。
多くの場合再生プレーヤーに付属のHDMIケーブルがあるため、基本的にはそのケーブルを利用することになるでしょう。
自分で用意する場合は、HDMI規格が2.0の「プレミアムハイスピード」、もしくは2.1の「ウルトラハイスピード」のHDMIケーブルを使用しましょう。どちらもHDR対応となっていて、HDMI2.1は最新の規格になります。規格が記載していない場合は、パッケージや商品紹介でHDR対応しているケーブルか確認しましょう。
HDR対応テレビの選び方
HDRに対応しているテレビを選ぶ際には、いくつかのポイントがあります。以下を参考に、HDR対応テレビの選び方をチェックしておきましょう。
液晶か有機ELかで選ぶ
テレビには「液晶」と「有機EL」と呼ばれる、2つの種類があります。まずは液晶と有機ELのどちらが自分の環境に適しているのかを確認し、購入するHDR対応テレビの種類を絞り込むことがポイントです。
一般的に明るいリビングで使用する場合は、液晶テレビの方が使いやすいです。逆に暗い雰囲気のリビングには、より高画質での出力が可能な有機ELテレビの方が見やすくなるでしょう。
HLG対応した4Kテレビを選ぶ
4K放送で採用されたHLG方式を楽しみたい場合には、HLG対応ディスプレイのテレビを使用しないと従来のSDRで映像が表示されてしまいます。
基本的に2018〜2019年頃以降に発売された4Kテレビは、ほとんどがHLG対応となっています。一方で、それ以前の4Kテレビの場合は、HLGに対応していないことが多いため注意が必要です。
モニターの選び方
HDR対応のモニターの選び方をご紹介します。モニターは動画の視聴以外にも利用用途が多いため、ご自身が使用する用途を明確にすることが大事です。
プレイするゲームで選ぶ
プレイするゲームによって従来のSDR対応モニターのままで良い場合があります。
例えば、競技性の高いFPSや格闘ゲームなどではSDR対応モニターが良いでしょう。HDRでは暗い場面の視認性が下がるため、暗い場所に隠れている敵を見つけにくくなるといったケースが考えられるためです。
また、映像を綺麗に表現することでゲーム機やPCの負荷が増えてしまい、映像がカクカクすることもあります。
ただし、ゲームでもHDRに対応したコンテンツや原作の映像が流れる作品などプレイと映像どちらも楽しめるものが増えています。プレイングにこだわらず、映像を楽しむゲームをしたい方にはHDR対応のモニターがおすすめです。
視聴するコンテンツで選ぶ
NetflixやU-NEXTなどの動画配信サービスでは、HDR対応の映画の配信も増えています。もし、パソコンで動画配信サービスのHDR対応コンテンツを視聴したい場合は、HDR対応のモニターが必須となります。
コストで選ぶ
こだわりがなくコストを抑えたい場合はSDR
SDR対応モニターはHDRと比べて費用を抑えることができるため、最低限の画質で視聴できれば問題ない方や普段からパソコンで動画をあまり見ない方は、SDR対応のモニターがおすすめです。
今はHDR対応のコンテンツを視聴する機会が少なくても、できるだけ綺麗な映像を楽しみたいと考えている場合は、HDR対応モニターでも良いでしょう。
ご自身の利用用途や頻度とコストを突き合わせて検討してみてください。
まとめ
HDRは、映像表現を大きく変える技術として注目を集めています。仮に同じ映像でも、従来のSDRで表現されたものと、HDRで表現されたものでは、感じ方が大きく異なるでしょう。
より綺麗で没入感を得られる映像を体験してみたいのなら、この機会にHDRとはどんな技術なのかを確認した上で、HDR対応テレビの導入を検討してみてはいかがでしょうか。